京都大学大学院文学研究科21世紀COE 「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」

王権とモニュメント


安祥寺の研究I

「王権とモニュメント」研究会がすすめる「安祥寺の調査研究」の成果報告として、『安祥寺の研究 I 』が2004年3月に刊行された。内容は以下のとおりである。

『安祥寺の研究 I 』目次
はじめに
凡例
報告篇
第1章 安祥寺の歴史と環境 梶川敏夫・上原真人
第2章 安祥寺上寺跡の測量調査成果 梶川敏夫・上原真人・岩井俊平
第3章 安祥寺資財帳の校訂・釈読 鎌田元一・中町美香子
第4章 安祥寺下寺の建築的調査 山岸常人
論考篇
安祥寺五智如来像の造像と仏師工房 根立研介
安祥寺以前―山階寺に関する試論― 吉川真司

第1章では、安祥寺が所在する山科地域の地理的・歴史的環境を紹介し、さらに安祥寺創建から現在に至るまでの歴史を詳細に論じる。周辺の遺跡地図や写真も掲載する。

第2章は、2002年度に実施した安祥寺上寺跡測量調査の正式な報告である。今回新たに製作した地形測量図に加え、周辺の地形図、航空写真、さらに建物配置の復原図等を掲載する。

第3章は、『安祥寺伽藍縁起資財帳』の校訂と、その釈読である。より古い体裁を保つ東京大学図書館所蔵本をもとに新たに校訂された本章の内容が、今後の研究の基礎となることは確実である。

第4章は、山科に法灯を伝える現安祥寺堂舎の調査報告である。江戸時代にさかのぼる各建物の建築学的調査内容を、詳細な平面図と豊富な写真で紹介している。

論考篇の根立論文は、これまで様々に議論されていた安祥寺蔵の五智如来像についての新見解を展開する。製作年代と安置堂宇の問題に加え、製作に携わった仏師工房の内容についても考察を行っている。

吉川論文は、安祥寺成立以前の山科の地域史を考察するため、これまでもその位置について諸説があった山階寺に関して考察を行っている。安祥寺資財帳の内容とも係わる重要な問題である。

以上のように、『安祥寺の研究 I 』は関連分野の最新の研究を掲載した報告書・研究書であり、今後も広く利用されることは間違いない。「王権とモニュメント」研究会では、さらに『安祥寺の研究 II 』の刊行を目指して活動を行っていく予定である。