京都大学大学院文学研究科21世紀COE 「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」

王権とモニュメント


自給的で完結していた小地域が異文化に触れ、世界観に180度の変換を迫られる。これを地域ごとの目、すなわち多元的人文学の見地から見たグローバル化と捉えれば、歴史的には、各時代、各地域にグローバル化があったことになる。特に王権の伸張が、広域的領土支配を生み出したときは、かつての小地域は予想もしなかったグローバル化の荒波にさらされることになる。その小地域の目で見た時、王権はモニュメントで象徴されることが多い。

王権は政治力・経済力、宗教的権威など各種の権力によって支えられる。そうした諸々の権力を、目に見える形で示した建造物がモニュメントである。しかし、モニュメントは単なる王権の象徴ではなく、モニュメントの造営がその権威を保証し再生産する機能をになう。それは王権の由来を語り確認する神話や儀礼が、王権を保証し再生産することに共通する。しかし、言語や所作は記録に留めない限り消滅する。これに対して、モニュメントは王の死後も存続し、機能が消失してもランドマークや遺跡として残ることが多い。また、モニュメントは時代、地域を問わず世界中に存在する。ピラミッド、神殿、モスク、古墳、廟、寺院、教会、宮殿、城郭、競技場、議事堂、石碑、凱旋門などがそれに該当する。本プロジェクトは、そうしたモニュメントと王権との関係を、文献・建築・考古などの諸分野を総合し、時間的、空間的な広がりの中で、その共通性と相違点を具体的に解明することを目的とする。

本プロジェクトでは、当面、2つの方向から王権とモニュメントとの関係を検討していくことにしたい。まず第1に、世界諸地域における王権とモニュメントの様相の比較検討を行なう。具体的には、研究分担者およびゲスト・スピーカーが専攻する時期・地域におけるモニュメントの特徴と王権との関係について研究会で発表し、議論を進めることにより、モニュメントの地域性と普遍性について検討を進める。

第2に、フィールド・ワークを中心とした具体的な調査研究を通して、特定地域におけるモニュメントの諸様相を明らかにする。当面は、日本および朝鮮半島の古代都城とその周辺のモニュメントを研究対象とする。